• 1

    ファトマ・ハッスーナ

    八竹庵(旧川崎家住宅)

    1

    FATMA HASSONA

    八竹庵(旧川崎家住宅)

    ファトマ・ハッスーナは、想像を絶する状況のなかでガザの日常を記録し続けた、パレスチナの写真家でありアクティヴィストでした。2025 年4 月16 日、25歳の若さで、彼女は彼女自身を狙った爆撃により家族数名とともに命を落としました。彼女の発信は、個人的でありながら生活に根ざしたまなざしに貫かれており、SNS を通じて大きな注目を集めました。亡くなるまでの18 カ月間、彼女は明るく揺るぎない存在となっていき、写真には不正義と闘う力があると、心から信じ、活動していました。

    KYOTOGRAPHIE 2026 では、彼女の遺した貴重な写真作品を紹介し、ハッスーナの崇高な活動に敬意を捧げます。国連の発表(2025 年9 月4 日時点)によると、ガザではすでに少なくとも248 人のジャーナリストが命を落としており、これは現代のいかなる戦争よりも多い人数です。ジャーナリストがこれまでにない危険にさらされている今、本展が、この大きな悲劇と、この1 年で失われた無数の「命」について思いを寄せる、追悼の場となることを願っています。

  • 2

    A4 ARTS FOUNDATION

    Photo book!
    Photo-book!
    Photobook!

    八竹庵(旧川崎家住宅)

    2

    A4 ARTS FOUNDATION

    Photo book!
    Photo-book!
    Photobook!

    八竹庵(旧川崎家住宅)

    南アフリカの写真にフォーカスしたKYOTOGRAPHIE 2026 の試みにあわせて、ケープタウンを拠点とするA4 Arts Foundation が、南アフリカの写真と歴史への理解を深めるために選書したフォトブックのコレクションを紹介します。この選書は数十年にわたる写真表現を横断し、1 枚の写真が国をどのように縁取り、幻想をつくり、ときに問い直し、そして再構築してきたのかを詳らかにしていきます。本展「Photo book! Photo-book! Photobook! 」は、2022 年にA4 Arts Foundation で初めて開催され、その後もアップデートと再構成を重ねています。KYOTOGRAPHIE 2026 では、南アフリカの写真集における革新、リスク、そしてレジスタンス(抵抗)といったテーマを探究する、A4 のキュレーター、ショーン・オトゥールの新刊も展示します。同書には、アーネスト・コールの『House of Bondage』 (1967)、デイヴィッド・ゴールドプラットの『In Boksburg』 (1982) について緻密に書かれたエッセイに加え、1950年代以降に出版された約50冊の重要な写真集の解説が収録されています。

  • 3

    フェデリコ・エストル

    Shine Heroes

    誉田屋源兵衛 黒蔵

    3

    FEDERICO ESTOL

    Shine Heroes

    KG+SELECT Award 2025 Winner

    誉田屋源兵衛 黒蔵

    毎日、ボリビアのラパスでは3,000人を超える靴磨きの人びとが街に出ています。こうした匿名の働き手たちは、ボリビアにおける「非正規の経済活動」の一部を担っていますが、そのことで差別のまなざしにさらされやすい脆弱な立場に置かれ、基本的な労働の権利からもこぼれ落ちてしまいます。身元を隠すために変装をしているのは、近所の人びとは誰も彼ら、彼女らが靴磨きで生計を立てていることを知らず、家族でさえも別の仕事をしていると思っているためです。

    靴磨きをする人びとは社会の周縁に追いやられています―しかし、エストルの写真のなかでは違います。エストルは、靴磨きの人びとを「ヒーロー」として捉え直しています。エストルは60 人の靴磨きと、彼らを支援する地元の団体「Hormigón Armado」とともに作品制作を進めてきました。この団体は、靴磨きの人びとの収入につながる月刊新聞を発行しています。2019 年、エストルは写真特集号を制作し、その後、写真の世界におけるこのプロジェクトの成功をもとに、CD 、おもちゃ、カレンダー、ポストカードといったさまざまなアイテムを制作してきました。

    エストルは本作でKG+SELECT 2025 Award を受賞し、KYOTOGRAPHIE 2026 ではあらたな個展として開催します。会場には、ラパスで靴磨きの人びとが実際に使用してきた道具も展示予定です。彼ら、彼女らが身につけてきた仮面を、匿名性の象徴としてではなく、むしろ、「アイデンテイティと団結」を象るものとして―。

  • 4A

    タンディウェ・ムリウ

    Camo

    誉田屋源兵衛 竹院の間

    4A

    THANDIWE MURIU

    Camo

    Presented by LONGCHAMP

    誉田屋源兵衛 竹院の間

    タンディウェ・ムリウにとって写真は、自らの文化的なルーツをたたえるための方法であり、同時に、アイデンティティを形づくる文化的要因について問いを投げかけるための手段となっています。KYOTOGRAPHIE のアフリカン・アーティスト・イン・レジデンスとして招聘されたケニア出身のムリウは、その代表作と、京都で生まれた新作を展示する2つの展覧会を発表します。

    女性として、ケニアで男性優位の構造のなかで生きてきたムリウは、社会における女性の役割、伝統がどのように機能しているか、そして自分自身をどう見つめるかという問いに、繰り返し向き合ってきました。こうした経験が〈CAMO〉シリーズの着想につながり、そのなかで被写体は背景のなかへと姿を消しつつ、同時に「自身を写し返すキャンバス」として立ち上がります。そして、日々の暮らしのなかにある日用品と、アーカイブ写真に着想を得た髪型が、ひとつひとつのイメージに隠された意味として織り込まれています。また、各写真にはアフリカのことわざが添えられ、ムリウは視覚表象を通して文化を伝えるとともに、世代を超えて受け継がれてきた口承の知恵をそこにそっと息づかせています。

    〈CAMO 〉に加えて、ムリウは京都でのレジデンス期間で新たに制作した作品も紹介します。ムリウ自身はこれまで来日したことはありませんでしたが、布やテキスタイルの歴史を辿る過程で、日本という存在に何度も行き当たったと言います。こうした関心を広げながら、日本で古くから用いられてきた布や文様を作品に取り入れ、ケニアと日本に通じる視覚言語のつながりや、その重なり合う歴史について探求しています。

  • 4B

    タンディウェ・ムリウ

    KYOTOGRAPHIE African Residency Program

    出町桝形商店街 ― DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space

    4B

    THANDIWE MURIU

    KYOTOGRAPHIE African Residency Program

    出町桝形商店街 ― DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space

    タンディウェ・ムリウにとって写真は、自らの文化的なルーツをたたえるための方法であり、同時に、アイデンティティを形づくる文化的要因について問いを投げかけるための手段となっています。KYOTOGRAPHIE のアフリカン・アーティスト・イン・レジデンスとして招聘されたケニア出身のムリウは、その代表作と、京都で生まれた新作を展示する2つの展覧会を発表します。

    女性として、ケニアで男性優位の構造のなかで生きてきたムリウは、社会における女性の役割、伝統がどのように機能しているか、そして自分自身をどう見つめるかという問いに、繰り返し向き合ってきました。こうした経験が〈CAMO〉シリーズの着想につながり、そのなかで被写体は背景のなかへと姿を消しつつ、同時に「自身を写し返すキャンバス」として立ち上がります。そして、日々の暮らしのなかにある日用品と、アーカイブ写真に着想を得た髪型が、ひとつひとつのイメージに隠された意味として織り込まれています。また、各写真にはアフリカのことわざが添えられ、ムリウは視覚表象を通して文化を伝えるとともに、世代を超えて受け継がれてきた口承の知恵をそこにそっと息づかせています。

    〈CAMO 〉に加えて、ムリウは京都でのレジデンス期間で新たに制作した作品も紹介します。ムリウ自身はこれまで来日したことはありませんでしたが、布やテキスタイルの歴史を辿る過程で、日本という存在に何度も行き当たったと言います。こうした関心を広げながら、日本で古くから用いられてきた布や文様を作品に取り入れ、ケニアと日本に通じる視覚言語のつながりや、その重なり合う歴史について探求しています。

  • 5

    リンダー・スターリング

    京都文化博物館 別館

    5

    LINDER STERLING

    Presented by CHANEL Nexus Hall

    京都文化博物館 別館

    リンダー・スターリング(1954 年生)は、イギリスで最も影響力があり、型破りな現代アーティストの一人です。1970年代後半のパンクシーンから登場した彼女は、写真やフォトモンタージュを大胆に用い、欲望や女性の身体に関する既成概念に挑み、それを再構築してきたことで高く評価されています。

    アーティスト本人との綿密な協働のもと構成された本回顧展では、彼女の革新的な創作の軌跡をたどりながら、主要作品を紹介します。リンダー独自の視覚言語は、ハンナ・ヘッヒやマン・レイらダダイストの精神や、シュルレアリスムの夢幻的な挑発から着想を得ながらも、現代的な感性と視点を鮮烈に示しています。

    リンダーの日本初の個展となる本展は、ロンドンのヘイワード・ギャラリーでの近年の回顧展に続いての開催となり、英国アートシーンにおいてフェミニズムの先駆者として独自の地位を築いてきた彼女の存在を強く裏付けるものです。

  • 6

    アントン・コービン

    嶋臺(しまだい)ギャラリー

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    ANTON CORBIJN

    Supported by agnès b.
    With the patronage of the Embassy of the Kingdom of the Netherlands

    嶋臺(しまだい)ギャラリー

    アントン・コービンは、デペッシュ・モード、U2 、ローリング・ストーンズ、ゲルハルト・リヒター、アイ・ウェイウェイなど、世界的アーティストたちの姿を「永遠のイメージ」として写しとってきたことで広く知られています。彼が一貫して用いてきた独自のスタイル——スローシャッターによるモノクロ撮影——によって生み出されるコービンのポートレートは、被写体の繊細な動きやしぐさに宿る「身体性」を写し出しています。「完璧さよりも、不完全さの方がよほど「生」に近いと私は感じています」と、2015 年の『TIME』誌のインタビューで語っています。

    2025 年、彼は70 歳の誕生日と、アーティストとして50 年の節目を迎えました。選集的回顧展というべき本展では、代表作からあまり知られていない作品まで幅広く紹介し、コービンの半世紀にわたる気鋭のポートレート表現の歩みをたどります。

  • 7

    ジュリエット・アニェル

    有斐斎弘道館

    7

    JULIETTE AGNEL

    Presented by Van Cleef & Arpels

    有斐斎弘道館

    ジュリエット・アニェルは、風景と光に向けた詩的で形而上学的なアプローチで知られるフランスのアーティストです。人間と自然、そしてそのあいだを結びつける目には見えない力学を探りながら、深夜の暗闇のなかで、あるいは砂漠や氷河といった辺境の地で制作を続けてきました。そうした場所で、アニェル自身が「世界の振動」と呼ぶものを捉えています。その実践は、哲学や人類学に通じるテーマと響き合い、主題であり象徴でもある時間や神話、そして光という存在に対する繊細な感受を浮かび上がらせています。

    KYOTOGRAPHIE 2026 では、ヴァンクリーフ&アーペルとのコラボレーションで制作されたカラーシリーズ〈Dahomey Spirit〉と〈Susceptibility of Rocks〉を展示予定です。 2つのシリーズに加え、新作の展示を予定しています。

  • 8

    森山大道

    A Retrospective

    京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階

    8

    DAIDO MORIYAMA

    A Retrospective

    Presented by Sigma
    Exhibition organised by KYOTOGRAPHIE and Instituto Moreira Salles In collaboration with Daido Moriyama Photo Foundation

    京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階

    およそ60年にわたるキャリアを通して、森山大道は写真という表現の慣習をつねに揺さぶりつづけてきました。大阪に生まれた彼は、身のまわりの世界を精力的に記録しながら、カメラや印刷メディアが果たす機能、そして私たちがどのようにイメージを流通させ、消費しているのかについて、その役割に問いを投げかけてきました。こうしたラディカルな姿勢は、敗戦と、それに続く7年間のGHQ占領下を経て、急速に変化していった戦後日本で育つことで形づくられたものと言えます。こうした決定的な数十年のあいだに自身の表現を見出し、またアンディ・ウォーホル、ウィリアム・クライン、ジャック・ケルアックといったアメリカの作家たちからの影響を受けながら、森山は写真を通して「現実の表象」や「真実と虚構」、「記憶」と「歴史」について思索してきました。

    KYOTOGRAPHIE 2026では、モレイラ・サレス研究所(ブラジル)のチアゴ・ノゲイラがキュレーションし、森山大道の全体像を見渡す回顧展を開催します。同展はこれまで、モレイラ・サレス研究所、C/O Berlin(ドイツ)、フィンランド写真美術館、フォトグラフィア・エウロペア写真祭(イタリア)、エリゼ写真美術館(スイス)でも開催され、ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーでの展示はガーディアン紙の「年間最優秀写真展」に選出されました。今春の展示では、京都市京セラ美術館という特別な空間に合わせ、新たに構築されます。ノゲイラは、森山の芸術的な歩みを決定付けてきた無数の雑誌や出版物に特別な焦点を置き、本展では森山の代表作の多くが生まれたフォトエッセイ、伝説的な雑誌『プロヴォーク』への寄稿、そして写真に根本的な問いを投げかけた画期的な写真集『写真よさようなら』(1972)といった軌跡が含まれる予定です。

    森山大道「A RETROSPECTIVE」展は、Daido Moriyama Photo Foundationのサポートと、神林豊氏、町口覚氏、木村一也氏の協力により制作されています。

  • 9

    アーネスト・コール

    House of Bondage

    京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階

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    ERNEST COLE

    House of Bondage

    Supported by Cheerio
    In collaboration with Magnum Photos

    京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階

    アーネスト・コールによる『House of Bondage』(1967) は、アパルトヘイトの実態を世界に明らかにした最初期の写真集です。特筆すべきは、それが「黒人」写真家自身の視点から、黒人の経験を初めて提示する出版物だったことでしょう。

    1940年に生まれたコールは、南アフリカで最初期の黒人フォトジャーナリストのひとりとなり、鉱山労働者や家事労働者の生活から、交通·教育・医療の制度の実情に至るまで、あらゆる現場をひそかに撮影しました。南アフリカの黒人コミュニティによって黒人読者向けに出版された雑誌『DRUM』やニューヨーク・タイムズの依頼を受けながらも、彼は並行して『House of Bondage』のための撮影を続けていました。

    1966 年、コールは南アフリカを逃れニューヨークヘ渡ります。翌年に『House of Bondage 』を刊行したことで、彼は母国への永続的な入国禁止措置を受けました。今日でもこの写真集は、アパルトヘイトを告発した最も影響力のある記録のひとつとして位置づけられ、その暴虐の実態を世界に暴き出した作品として高く評価されています。

    本展では、コール自身が撮影した写真、雑誌の表紙、そして彼が残した個人的なノートを展示します。構成は、彼のオリジナルの写真集に沿い、15 のテーマに分けられています。日本で初めて紹介されるこの大規模な展覧会は、コールが遺した揺るぎない誠実さと、その遺業に触れられる、またとない機会となるでしょう。

  • 10

    ピーター・ヒューゴ

    What the Light Falls On

    京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階

    10

    PIETER HUGO

    What the Light Falls On

    京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階

    ヒューゴの初期のプロジェクトは、明確なテーマのもとに構築されたヴィジュアル・エッセイの形式を取っていましたが、〈What the Light Falls On〉シリーズでは、より自由なアプローチが取られています。決められた枠組みの内側で制作するのではなく、彼は場所と時間に直感的に反応し、「根源的な坊径衝動」と自身が名付けたものに導かれながら撮影を行っています。20年以上にわたって向き合ってきたこのシリーズでは、ポートレート、風景、静物が交差し、経験と情動のありようについての対話的で個人的な省察へとつながっています。

    この作品群の中心には、死に対する思索があります。〈What the Light Falls On〉は「生」から始まり「死」で終わります—冒頭には娘の誕生の瞬間が登場し、最後には亡き父の臨終の姿が収められています。ヒューゴはこう語ります。「これは中年期と結びついたものなのです」と彼は言います。「肉体的にも精神的にも柔らかくなっていくこと、美と悲劇、残酷さと優しさ—これらが繰り返される生命の循環のことでもあるのです。哲学者セネカが簡潔に述べたように、「あらゆる新しい始まりは、別の始まりの終わりから生まれる」のです」

  • 11

    福島あつし

    ygion

    11

    ATSUSHI FUKUSHIMA

    Supported by Fujifilm

    ygion

    福島あつしは、いわゆる「写真家らしい」写真家ではありません。2004年に大学を卒業して以来、彼は弁当の配達員として働き、日本列島を縦断する旅に出ながら、農業に携わり、その度ごとに道中で出会った人びとや風景を撮り続けてきました。

    KYOTOGRAPHIE 2026 で福島は、農場で働く7 年間のあいだに制作した作品を発表します。「友人から誘われて農家の端くれとなった僕は、当然のように農業=穏やかな日常というものを期待していた。しかし、実際に僕が関わった農業はそれとは別世界だった。労働単価をいかに上げるかを追求し、そこに資金・アイデア・情熱など自分たちが持つ全てを注ぎ込み、事業を進めていく。そこに面白み、やりがいを感じながら生きていく。野菜を愛でる時間なんてありはしなかった」と福島は語ります。

    今回の展示は、このプロジェクトにとって初めての大規模な発表となり、同時に福島がKYOTOGRAPHIEのメインプログラムヘ戻ってくる節目でもあります。彼は2020 年、KG+SELECT Award 2019 を受賞した〈ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ〉を出展しました。

  • 12

    柴田早理

    Ruinart Japan Award 2025 Winner

    ASPHODEL

    12

    SARI SHIBATA

    Ruinart Japan Award 2025 Winner

    Presented by Ruinart

    ASPHODEL

    KYOTOGRAPHIE2025で、ルイナール・ジャパン・アワードを受賞した柴田早理は、フランス・ランスにある長い歴史をもつシャンパーニュ・メゾンの本拠地に滞在しました。周囲を囲む畑や森のなかで季節のうつろいを見つめながら、柴田は本展で発表する女性が葡萄のように成長し成熟していくストーリーの作品群を形づくっていきました。

    柴田は、環境が変わりゆく姿や、人間の営みがもたらす影響を手がかりに制作を続けています。富山県南砺市の山あいで育ちましたが、成人してからの多くの時間を都市で過ごしてきました。自然から離れていくその感覚が、彼女にとって「人間」と「自然」を見つめ直すきっかけになったといいます。

    「仕事や日々の生活で私はすっかり疲れ切っていましたが、ランスでは自然の中へ戻ることができ、その感覚がどれほど深く心を動かすものなのかを思い出しました」と柴田は語ります。「レジデンスという時間の中で、自然がいかに制御できない力を持っているのかを、あらためて思い知らされました」

  • 13

    イヴ・マルシャン& ロマ・メェッフェル

    重信会館

    13

    YVES MARCHAND & ROMAIN MEFFRE

    重信会館

    20年以上にわたりユニットとして活動してきたイヴ・マルシャン&ロマ・メェッフェルは、近代建築の廃墟を大判カメラで撮影した作品で広く知られています。北米各地の無人の劇場、日本の「軍艦島」、そしてデトロイトの都市衰退の風景など、その対象は多岐にわたります。近年、ふたりはAl 技術を用いて、パリという都市そのものを「終末後」の廃墟へと変容させる実験にも取り組んできました。そこでは、ポンピドゥー・センターは錆びつき、ルーヴルのガラスピラミッドは砕け散り、ムーラン・ルージュは蔦に呑み込まれています。

    KYOTOGRAPHIE 2026 では、マルシャン&メェッフェルが長年取り組んできた建築的廃墟についての研究である〈The Ruins of Detroit〉〈軍艦島〉〈Les Ruines de Paris〉のシリーズから作品を幅広く展示します。さらに、ふたりは京都でも新たなシリーズを制作します。パリと同じ手法を用い、Al によってこの古都を荒廃した廃墟へと変貌させる試みです。歴史と介入が交差するこの展示のなかで、マルシャン&メェッフェルは、写真が持つ真正性、Al が私たちを欺き得る力、そして現実と虚構の境界のあわいに問いを投げかけます。

  • 14

    レボハン・ハンイェ

    東本願寺 大玄関

    14

    LEBOHANG KGANYE

    Presented by DIOR

    東本願寺 大玄関

    レボハン・ハンイェが写真に出会ったのは偶然でした。もともとはジャーナリズムを志していましたが、進学が叶わず、デイヴィッド・ゴールドブラットによって設立された名高いMarket Photo Workshopに入学したことで、自身の進むべき道を見つけることになります。彼女の表現は現在、写真にとどまらず、アニメーション、インスタレーション、テキスタイルヘと広がり、文学や演劇、歴史への深い関心とも結びついています。

    ハンイェは、KYOTOGRAPHIE 2026 で日本初となる大規模な個展を開催します。今回取り上げるのは、〈Keep the Light Faithfully〉〈Mohlokomed i wa Tora〉〈Mosebetsi wa Dirithi〉〈The Sea Is History〉 〈Ke Lefa Laka: Her-story〉という5 つの重要なシリーズです。これらの作品群は、個人史と歴史的物語がどのように形成され、断片化され、そして再び構築されていくのかを探っています。

    切り抜かれたシルエット、演出写真、ジオラマのライトポックス、布や影、彫刻的な介入—。ハンイェはこうした多様な技法を通じて、南アフリカの個人的な記憶の断片が、より広い政治的かつポストコロニアルな現実と重なり合う層状の世界をつくりあげています。これらのシリーズを通じて、ハンイェは、未完のアーカイブを受け継ぐとはなにを意味するのか、空白をどのように埋め、他者の歴史をどのように守るのか、そしてときに「虚構」こそがより誠実なかたちで「真実」を照らすことがあるのはなぜなのか、その倫理を問い続けています。